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【優秀賞】優秀賞 沖縄の伝統的中庭がある家

制作者
九州女子大学
村上千夏(家政学部人間生活学科)
成冨咲良(家政学部人間生活学科)
仲村渠里奈(家政学部人間生活学科)
黒木美里(家政学部人間生活学科)
 

沖縄県では、戦争によって打撃的な被害を受け、伝統的な住宅にも被害が及んだ。
元来、シロアリの発生や台風などの影響を受けやすい土地であったため、戦後に
建てられた住宅は鉄筋コンクリート造、補強コンクリートブロック造がほとんどと
なった。しかし、近年はコンクリート造住宅の老朽化に伴い、建て替えの時期を
迎え、木造住宅が増えている。そこで、本土様式の木造住宅ではなく、沖縄の風土
・景観に調和し、沖縄の現代に通用する伝統的木造住宅を提案する。
人が集う家には常に中庭がある。沖縄の伝統的な民家には中庭が存在する、その
役割は雨水を溜め、飲料水としての活用がなされてきた。また、中庭を世代間交流
の場として季節の行事として行われるミーシー、ウンケーなどやそこで振る舞われる
沖縄の郷土料理を継承する場所として使われる。この計画は中庭を中心として地域に
暮らす人々の伝統文化を継承することでアイデンティティを培う提案である。
<背景>
 沖縄の住宅は、伝統的構法による木造住宅から、第二次世界大戦後を契機に鉄筋
 コンクリート造住宅が主流となり、1959年に58.6%だった木造率は、1993年には
 1.9%にまで落ち込んだ。これは台風やシロアリ被害への懸念に加え、戦後の米軍
 による住宅政策等が背景にあった。しかし、近年では本土のハウスメーカーによる
 沖縄への参入をはじめ、強度の向上や鉄筋コンクリート造より安価な点から、2000
 年以降から木造率は20%以上の普及に至っている。一方で、戦後の鉄筋コンクリート
 象住宅の普及に伴い、沖縄県内の製材業及び伝統的木造構法を含めて木造住宅を手掛
 けられる建築技術者が少ない状況となった。その状況下で、本土業者による移入材で
 作られた在来木造住宅の浸透が進んでいることが、沖縄の地元素材を活用した沖縄
 らしい住宅風景を損なう恐れを生じている。
<沖縄の伝統住宅が残る那覇市金城町>
 沖縄本島の南部に位置し、沖縄の玄関口である、沖縄県那覇市首里金城町を舞台とした。
 首里城の城下にある金城町は琉球王朝時代には城下町として栄えた。金城町石畳道は琉
 球石灰岩が敷かれた。石畳道で首里城から300m続いており、不揃いな積み石が成功に
 噛み合う「あいかた積み」の手法が使われている。
□住民構成
 父(38歳)/会社員 母(36歳) 長男(10歳) 小学4年生
  敷地面積 253㎡
  床面積  102㎡
  木材料費 250万円

<日本を代表する沖縄の伝統構法>
 貫木屋形式と呼ばれる沖縄の伝統的構法により、構造部材に釘は用いず、
 仕口や継手で締め固めて堅牢な小屋組とし、建物の剛性を高める。石場建て
 様式と同じ構造で、礎石の上に和小屋に茅か瓦葺き、壁は堅羽目板とする。

<先人の知恵 アマハジ>
 横なぐりの風や直射日光を遮るために深い庇のアマハジを取り入れ、縁側の
 ような空間を作り出す。日陰では、団欒の場としても使用することができる。

<邪気の侵入を防ぐヒンプン>
 ヒンプンとは、屋敷の正門と母屋の間に設けられた塀のことで、外部からの
 目隠しとなっている。中国から伝わった文化で、正面から悪い気が侵入する
 ことを防ぐ役割がある。

<暴風対策 石垣 福木>
 台風対策の一環として住宅の周りを囲む石垣は、琉球石灰岩を使用し、周り
 から家の中が見えることはなくプライバシーが保たれる。幹が丈夫で葉が
 密につく福木は、台風や火災から住宅を守るため、防風林や防火林として
 住宅周囲や集落周囲に植栽される。

<伝統的な琉球赤瓦屋根>
 沖縄の建物の特徴である、琉球赤瓦屋根は、沖縄南部一帯で取れる「クチャ」
 という泥岩を作って作られている。熱を吸収しづらく断熱性に優れており、
 日没と共に表面温度が急に下がる。
 また、通気性も良く結露防止の効果が期待される。
 漆喰やビスで固定することにより、強風で飛ばされにくい。

配置計画
 沖縄の伝統的古民家を参考に計画した。
 既に建てられていた鉄筋コンクリート造住宅は戦後すぐに建てられており、
 老朽化していたため取り壊し、周囲の美しい街並みの景観を守るため木造
 の沖縄民家とした。中庭を囲む間取りを取り入れることで台風に強く、作業
 や行事に使用できる中庭ができた。
 鉄筋コンクリート造の跡地を中庭としたことで、家族交流や季節の行事の場
 として利用し、家屋の変遷の記憶を次の世代へと語り継ぐ。

□風土に根差した素材の活用
 地域の特性を引き出す風土に見合った素材を用いることで、味わいのある沖縄
 らしい景観とすることが可能となる。

<快適な空間>
 花ブロックは沖縄の特徴的な建築材料であり、日射緩和とデザイン性を兼ね備え
 た材料である。また、空隙により十分な通風を確保することが可能で、サービス
 コートとして活用すると外部からの視線を遮ることができる。

<柔らかな雰囲気を生み出す琉球ガラス>
 デザイン的なアクセントや変化に富んだ採光を得るために使用される。暗くなると、
 様々な色彩のアクセントを提供する。

<優しい色合いが特徴の琉球石灰岩>
 保湿性や通気性に優れており、サンゴなどの化石模様が織りなす味わい深い素材感
 により、沖縄では様々な場所で使用されている。直射を受けてもコンクリートや御
 影石等に比べ熱くなりにくく、裸足で歩くことができる。高い吸水性と表面温度上
 昇の抑制能力に優れている。

中庭にある蒸散効果を促す冷却システム
 中庭に降った雨は敷石の琉球石灰岩で浄化され、中庭の地下タンクに貯蔵された雨
 水は中庭での水遊びや散水用として使用される。この蒸散作用により、冷やされた
 南からの風が室内に流れ込む。

中庭と伝統行事の関わり
 毎年4〜5月に「シーミー」と呼ばれているお墓参りが行われている。お墓でお供え
 物を食べる習慣だが、近年では、公園や中庭でお酒や沖縄の郷土料理を食べ、親戚
 と集まる。8月は沖縄県のお盆の行事で「ウンケー」と呼ばれる盆行事。獅子舞が中
 庭に訪れ踊りを披露する。獅子舞に頭を噛まれると厄払いとなり、無病息災で過ご
 せるという伝統がある。また、9月にお月見で出されるフチャギを食べながら外で月
 を楽しむ。旧暦での行事が多い沖縄ならではの中庭の使い方である。

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