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入選 やまの中の音楽堂

制作者
法政大学
豊見悠太(デザイン工学部建築学科)
西島弘晃(デザイン工学部建築学科)
藤田晃也(デザイン工学部建築学科)
細田賢 (デザイン工学部建築学科)

         

・家族構成
 夫(43歳):現役音楽家、お酒が好き。
 妻(41歳):ヴァイオリニスト、夫のピアノを聴くことが好き。
 子(15歳):高校1年生、幼い頃からピアノの英才教育を受ける。

・対象敷地
 東京都青梅市沢井。東京都の多摩地区に位置するこの土地は、
 JR青梅線が通っており、都心へのアクセスが比較的しやすい。
 豊かな自然に囲まれており、それを生かしたレジャー施設や
 1702年から続く酒造りが盛ん。観光客が賑わう飲食店も伝統
 建築で作られており、日本らしさを感じられ外国人観光客も
 多い。秋は紅葉が一望でき、目の前は川が流れていて、大変
 景色が美しい。

・高齢化
 定期的に地域の人々向けのピアノ教室を開くことにより、高齢
 化が進んでいるこの地域の活性化に繋がり、年々増加している
 孤独死の対策や認知症の予防に繋がる。この建築がこの町のシ
 ンボルとなる様に、都道45号と駅からアクセスしやすい位置に
 ある。
 周りの景観や伝統建築が多く並ぶこの街並みに溶け込むように、
 懸け造りや蔀戸といった日本独特の技法を使用し、外観も印象
 的な建築にした。

・音楽家の命である楽器に優しい環境づくり
 多くの楽器は「木」という自然素材を使用している物が多い関係上、
 楽器のコンディションは湿度に影響を受けやすい。有機素材は
 基本的に周りの自然環境に合わせようとする性質を持ち、湿度
 が高ければ水分を多く含み、乾燥の場合はそれに同じである。
 日本は四季を通じて、さまざまな環境の変化を向え、湿度の変化
 も多く、大切な楽器のコンディションを保つ為には、湿度管理
 は欠かせない。
 そこで高床式の懸造り、土壁を用いることで湿度の影響を低減
 させ、音楽家にとって最高の環境を提案する。

・懸造り
 山の中に位置するこの建築は、整然と並んだ束柱を水平の貫で
 つなぎ、さらに柱と貫の接合部には楔を打って緊結している日
 本独特の建築様式である懸造りによって支えられている。
 斜面レベルから離すことで湿度の影響を低減させ、風通しを良
 くする。

・土壁
 気温が低いこの土地に合わせ、蓄熱性の高い土壁を使用。日光
 から熱を蓄え、冬場も輻射熱によって快適に過ごせる。日本特
 有の夏の蒸し暑さにも調湿性によって対応できる。
 柱が見え、木の温かみや香りを感じられる。

・蔀戸
 障子の外部に蔀戸を取り付けることにより、雨の降っていない時
 は取り外して上部に固定し、縁側と内部の境界を曖昧にし、景色
 が一望でき自然と一体になれる空間を生み出す。

・多摩産材
 地産地消でウッドマイレージを削減し、自然環境に配慮。山の手
 入れも行うことができ、花粉の飛散も減少させることができる。

・音を演出する最大限の工夫
・方形屋根
 ホールのような大空間を生み出すために方形屋根を使用。
 梁を見せることにより木造住宅特有のダイナミックな空間を生み
 出すことができる。

・視線の抜け感
 傾斜地を利用してレベル差のあるフロアプランニングは、劇場の
 様な臨場感を演出し、空間を区切る事なくつなぎ、アイラインが
 奥まで抜けていく。

・音響環境
 土壁は、遮音性と吸音性という2つの性質を併せ持っている。土
 壁には細かい気孔があり、特に吸音性に優れているため、コンク
 リートの様に無闇に音を反響させずに、外部環境に考慮した音響
 空間を作り出すことができる。
 実際のコンサートホールなどでも、漆喰などの多孔質な材料が用
 いられるケースが多くある。

case.jpg

上図のように、可動式のスライド壁を動かすことで、様々な間取りの
パターンができ、現代のライフスタイルや家族構成の変化に対応する
ことができる。間取りの使用例としていくつか挙げると、まず、ピアノ
教室の生徒たちの発表会を開くときは、case2やcase3のような間取り
にして、ピアノの空間を広くとることで、生徒たちが大勢入ることが
可能である。また、作曲や瞑想など閉ざされた空間で集中したいとき
は、case1のように赤の部分の四方を壁に囲まれた空間にする。ほか
にもcase6のように、はっきりと壁で囲まずに境界を曖昧にすること
で、家族の姿は見えないが、家族の気配を感じることもできる。
家族構成の変化について、現在の家族構成は夫、妻、息子の三人家族
であるが、15年後に息子が結婚して子供を産み、家族が増えると必要
な部屋も増えるため、case6のような間取りにすることで、みんなが
自分の居場所を得ることができる。
このように、様々な変化が起こると考えられるため、可変式な空間が
必要であり、ワンルーム空間の大きな空間を分けるのに手軽に移動で
きるスライド壁を使用する。

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