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林野庁長官賞 弱い境界が縫う「職」と「住」

制作者
大阪市立大学大学院
中嶋純一(工学研究科都市系専攻)
川口昂史(工学研究科都市系専攻)
重永恵実(工学研究科都市系専攻)

現代の「食寝分離」と「公私分離」
過去の「職住一体」の考えを融合させた住宅を提案する。
家族、職場、地域に対して一体感のあるひとつなぎの空間である。
仕事のオンオフ、家族同士のコミュニケーション、地域との関わりが
無意識におこる。
職場であり住宅である。
それは”職宅”という類の建築である。

01 敷地・奈良県吉野町
 奈良県の中央部に位置し、「吉野杉」を中心とした林業が盛んである。
 山に囲まれているため夏は暑く、冬は寒さの厳しい内陸性気候に加えて、
 降水量が多い。
 このような気候に適応するため、勾配の違う屋根が連なる「大和棟造り」
 の風景が広がっている。街の中央部には吉野川が東から西へと流れ、その
 豊かな水源を利用した「手漉き和紙」が伝統であり、古くから吉野川と人
 々の暮らしには密接な関係がある。

02 吉野杉
 吉野杉とは日本三大美林の一つである奈良県の吉野林業地帯を産地とする
 ブランドである。年輪幅が細かく一定に保たれ、緻密で均一なため、他の
 杉よりも優れた強度を持っている。
 また、断熱や調湿効果を持つ吉野杉を利用することで建物の環境負荷が低
 減し、また地産地消により流通コスト面においてもメリットがある。

03 大和棟造り
 大和棟造りは、急勾配の茅葺き屋根と一段下がった緩い勾配の瓦屋根の二つ
 で構成されるのが特徴である。
 寒暖の差が大きい気候に対応するため、断熱性のある屋根が求められたこと
 から茅葺きになり、雨じまいのために急勾配となる。
 急勾配の屋根の下には居室、緩い勾配の屋根の下は土間とかまどの空間となり、
 屋根の勾配の違いで屋根の下の用途が変化する。
 大和棟造りでは、屋根の勾配や高さの違いにより部屋に入る光の入り方や空間
 の印象が異なり、空間同士の弱い境界を生みだす。
 本提案では大和棟造りの屋根形状に着目し、働く空間と住む空間とが緩やかに
 繋がる大和棟造りを計画する。
 屋根勾配をそれぞれの空間ごとに変化させていくことで現代の住宅のように完 
 全に壁で空間同士が閉じてしまうのではなく、弱い境界によって緩やかに空間
 同士が繋がり、適度な距離を保つことのできる計画とした。

04 ダイアグラム
 働く場=低い屋根 + 住む場=高い屋根
 働く場と住む場を交互に連続させる
 屋根の重なる部分には二階のスラブを設ける

05 家族構成と将来の住まいのあり方
 おばあちゃん(63歳) 父(40歳) 母(36歳) 長男(10歳) 長女(8歳)
 将来、子供が実家で働くことのできる自由な空間とした。大和棟造りと土間空間
 による弱い境界が、壁を多用せずとも空間を分節することができ、ひとつなぎの
 大空間を可能にします。それによって、生活環境の変化に応じて、住み手は色々
 な場所で自分にあった働き方ができます。

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