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優秀賞 蔵と暮らす

制作者
日本大学大学院
石川大二郎(理工学研究科建築学専攻)
尾崎健(理工学研究科建築学専攻)

海と港のまち南伊豆下田。
ペリー来航から160年。消え行く伝統的な「蔵」と
変わりゆく人々の「暮らし」。
付属屋的な蔵を構造、生活ともに中心に据える事で、
家族、近隣、まちを巻き込んだ暮らしの提案。


【Concept1】蔵と暮らす
江戸時代から現存する蔵を数多く所有する下田市。壊されてゆく建築物
の他にも、少子高齢化や産業衰退といった様々な問題を抱える。今回の
提案では、伝統意匠をもつ蔵に対し保全としての住空間を与える。

【Research1】海と港の町南伊豆下田
静岡県伊豆半島南端に位置する下田市旧市街地。港町として栄え、ペリー
来航ににぎわう歴史を持つ反面、急速な漁業需要の艇から徐々に空き家、
空き店舗が増えつつ有る。
2006年度から行われている「下田まち遺産調査」の結果及び考察から伝統
意匠をもつ下田に対して、統計的な情報から住民の暮らし、既存ストック
の活用と法的課題、観光を含めた町全体の更新に必要な布石として、住空
間による蔵の保全を提案する。

【Research2】消え行く蔵と変わりゆく暮らし
現在、旧市街地約1300の物件に対し、伊豆石、なまこ壁といった伝統意匠
を持つものは○○件その中でも住戸に隣接する蔵はとりわけ伝統意匠の使用
率、経年数ともに多い。現状の空き家問題に対し、接道条件を満たしてい
ない蔵は単独での保全が法的、環境的に困難であり、取り壊しもしくは現状
維持としての補修作業が限界となっている。

【Reseach3】伝統意匠「なまこ壁」「伊豆石」
木造住宅の立ち並ぶ下田市旧市街地。木造建築に対する基礎における構造的
補強として県産材である「伊豆石」と瓦と漆喰を用い壁面の耐火性能の向上
を行う「なまこ壁」の二つは、下田の歴史的意匠として保護活動が盛んに行
われている。木造の保護材としての伝統意匠に対し、伝統意匠を保護する木
造の提案を行う。

【Proposal1】住空間による蔵の保全
下田旧市街地における住戸形式は繁華街の背景から町家形式をとるものが多く、
また住戸の間口と合わせ、6-8mの間口による小規模の蔵が併設される。制度的
に住戸と共になくならざるを得ない蔵を、住空間に内在化させる事によって、
貯蔵の場から生活の場として新たな役割を与えるとともに町家の形式の再構成
を行う。

【Proposal2】大貫工法
蔵の保護を目的とし、前後に強固な空間を用いるため、伝統工法である「大貫
工法」を採用する。蔵の内部補強と大貫工法による外部補強により、補強と居住
のための空間を何時に形成する事が可能である。

【Proposal3】素材
静岡の県産材である黒松と比較的安価である杉によるフレーム。下田伝統意匠で
ある和瓦を用いたなまこ壁と伊豆石。これに加え、下田の伝統工芸である下田脂
松細工による建具を住空間の中に点在させる事で、住空間を巨大なインテリアと
して編纂する。

【Proposal4】建築計画
接道部分約10mから奥行き30mの300㎡を敷地とし、蔵を中心としてレイヤー状に
空間をつないでゆく。このとき、蔵に対し前面、背面、側面、また一層、尼僧と
平面、断面的な空間の展開が行われる。それぞれの空間のバリエーションに対し、
蔵の活用と同期しながら生活、作業、交流の空間の計画を行う。

【Proposal5】平面計画
既存の蔵を保護するにあたり、蔵の内外に住空間を付与してゆく。蔵に対し、貫
通と迂回の二つの動線によって空間を編纂する。単調なレイヤーの中に複数のア
プローチと蔵の開閉を与える事で想定の家族構成に対し、老夫婦の暮らし、職人
の作業、地域の憩い、若者の滞在が移ろいながら同居する。

【Proposal6】断面計画
高さ7mの蔵を中心とし各用途での床と天井高さに着目し計画を行う。小上がりを
用い、土間と床面につける高低差を蔵内部まで派生させ、生活と交流のしきりを
蔵の中に納め、蔵の開閉により、それぞれの領域を決定させる。

【Data1】森林への影響
建築において、木材需要の低下に伴う樹齢の高齢化は周知の問題である。本提案で
は県産材の黒松と飽和状態にある人工林の材料を用いる事で、林業経済意欲の復活
による健全な木材流通の促進を図る事が目的である。

【Data2】家族構成
伝統工芸「下田脂松細工」の工房を営む老夫婦。
主人:70歳 職人
妻 :70歳 主婦 下田民謡友の会所属
若者:20代〜30代 不定期で逗留

【Data3】建築情報
敷地面積:300㎡  建築面積:230㎡
延床面積:350㎡  建ぺい率:76.6%
容積率 :116.6%
総工費 :4202万円
木材費 :852万円
 

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