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入賞 雪を纏う屋根、いつもと変わらない中庭

制作者
北海道科学大学大学院
佐藤孝祐

北海道での新しい暮らしの形を提案する。
北海道で暮らす上で雪とともに上手に暮らすと言うことは、必要不可欠である。
しかし、現代の北海道での暮らしの中には雪とともに暮らすふるまいが見えてこない。
自らを過剰なほど厚い壁で守り、窓の面積は最低限に抑え、屋根は雪害が起こらないように無落雪にする。
そうすることで快適すぎる住空間を手にした。
北国において本当に豊かな生活を送るきっかけとなる住宅。それは、先人たちの知恵と高められた技術に
よって作り出せると考える。
雪の降る場所でも外に暮らしのふるまいをはみ出してもいいのではないだろうか。

○北海道という場所
 北海道は日本の中でも最も歴史の浅い場所とされている。しかし、北海道には元来アイヌ民族が
 暮らしており、未開拓の土地で生活していた。彼らが暮らしてきた文化やふるまいは、今の北海道
 ではあまり見受けることができない。彼らは日本一過ごしやすい夏と、最も過酷なとどのように
 ともに暮らしてきたのだろうか。

○北方型住宅
 雪国の建築は、常に独自の進化を遂げてきた。高気密・高断熱を徹底し、無落雪屋根やロードヒー
 ティングで雪を取り除くことを進めてきた。しかしあまりにも過剰になった雪に対する備えは、人々
 の生活から雪の気配を切り取ることで快適な住空間を手に入れた。

○雪に埋もれるアイヌ民族の住居「チセ」
 先住民であるアイヌの人々が住んでいた「チセ」という住居建築は、厳しい冬を越えるための工夫が
 多く存在した。その中の一つに、雪の中に埋もれるという方法がある。雪の中には空気が多く含まれ
 ているため、断熱性が高く、纏うことで室内の温度が逃げない。このような多くの知恵を持った彼ら
 の暮らし方を、今に引き継いでいないことに疑問を感じる。

○凍結深度
 北国では、地面が凍り付く現象が起きる。そのため建築を建てる際には凍り付かない深さまで地面を
 掘り下げる必要がある。北海道では最大120cm掘り下げなくてはいけない地域もあるため、地下を掘る
 ことが比較的日常的に行われている。地中は、一年を通して安定している。冬期も夏期も生活しやすい
 温度が地下にはある。

○大きな筒を持った屋根
 筒状の建物は煙突効果によって空気の流れをつくり出すことは広く知られている。しかし、その形態が
 雪にも影響することは、あまり知られていない。屋根の上に積もった雪は、風で空に舞い上がる。空か
 ら降る雪は通の上を通り抜けていく。筒の中にできた小さな屋外空間には冬でも雪はほぼ積もらない。
 大きな筒を持つ屋根で、冬でも使うことのできる中庭を北海道に提案することができる。

○造林の止まったエゾマツ林
 道南を除く北海道内に分布し、アカエゾマツとともに「北海道の木」に指定されている。道内では古く
 から天然林資源が利用されて植栽の歴史も古いが、現在ではほぞ造林されていないため、資源の保続が
 懸念されている。そんなエゾマツを建材として積極的に使用することで、保続するするきっかけになる。

○伝統工法の新たな捉え方
 様々な捉え方ができる伝統工法。筋交いや、金具、構造として有効な壁を用いないこの方法で、シームレ
 スに繋がり、既視感のない形状を目指した。さらに、地下を堀り建築が雪を纏うような屋根形状を作るこ
 とで、北海道で最も古いアイヌ民族の伝統を現代に繋げた。

○屋外空間のゾーニング
 ドアを開けても屋外空間が続く。雪の積もらない中庭が一年を通してエントランスの役割を果たす。内部
 空間の周辺を一周する屋外空間は雪が積もるとそれが屋根になり、カマクラの中のような空間になる。雪
 が降ることで役割が変わる場所。雪が降っても役割が変わらない場所。その両方が屋外空間に現れている。


 

 

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