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入賞 気仙の家

制作者
神戸大学大学院
百瀬弘一

ー気仙大工×復興住宅×薪バイオマスー
東日本大震災で大きな被害を受けた岩手県旧気仙郡。ここには寺社仏閣から民家まで扱い、大工・左官・建具に至るまで、
何でもこなした気仙大工と呼ばれる大工集団がいた。彼らの伝統技法を守り伝えつつ、復興の手助けとなるような3種類の
住宅タイプを持つ集合住宅の提案。伝統を守り、土地に愛着を持つことが復興の大きな原動力となることを祈ります。

主建材:高台造成に伴い伐採された気仙杉
敷地面積:500㎡
建築面積:237.9㎡
総工費:4,500万円

○薪×森林整備
 薪に適する木材は、針葉樹ではなく広葉樹である。薪のエネルギー利用が活発になり広葉樹の必要性が高まれば、
 現行の針葉樹に偏った植林が見直されるだろう。そうすることは、石油に頼った持続不可能な社会からの脱却の
 第一歩となるだけではなく、森の生物多様性、治水力の向上、海への上質な有機物の流入等のメリットとなるだろう。

○薪棚×土間空間
 夏季・・・風通しが良く、越屋根からの自然換気で熱気を留めない快適な土間空間となる。冬季に薪棚となるところも
      夏季には通り抜けができる。
 冬季・・・土間の薪棚に冬季に三世帯で使用する薪を貯蔵しておくことで、暴風壁を作り、冬季でも世帯間で交流できる
      快適な土間空間とする。

○居住者
 O家 核家族(父:33歳 母:32歳 長女:8歳 長男:6歳 次男:3歳)
    仮設の頃は様々な世代がいい塩梅でいたから、辛い状況でもなんとかやってこれたよ。
    復興住宅でも近所の人と協力していきたい。
 Z家 老夫婦(夫:70歳 妻:67歳)
    できることなら、以前のような家に住みたいが、年も年だし、息子が帰って来るかも分からないから諦めているよ。
    前の家は漆喰壁の真壁で入母屋屋根がかかっていてねぇ。
 M家 単身世帯(独身男性:24歳)
    少しでも復興の手助けになりたいと思っています。縁も所縁もない土地なので地元の人とどうやって
    お近づきになろうか・・・。

○気仙大工の技
 本計画で用いた気仙大工の技の紹介。他にも気仙地方の民家の特徴や気仙大工の技として、「板長押」
「放射状にはられた縁板」「床の間と一体化した書院」などがある。

●入母屋造と越屋根
 寺社仏閣も扱う気仙大工が得意とした入母屋造。その技術力で他にも複雑な屋根を手掛けた。本計画では、入母屋屋根の
 破風部分と、越屋根を冬場は薪ストーブの排気口として、夏は暖まった空気の自然換気口として利用する。
●投掛梁
 土間や居間の間仕切り部以外において、中桁から下屋柱にかけて渡した斜めの梁。下屋梁支持する。火打梁同様に上屋柱の
 省略を可能とする。
●船枻造
 近世の技法。軒先だけではなく、共用部に突き出たM家のバルコニーにも用いた。
●建具
 建具も扱った気仙大工。腰付障子は中央に三本、両脇に日本の桟を持つものが基本とされた。
●吊束
 自由な平面計画を可能にする吊束。差物を使用しているのは気仙大工の民家同様、玄関入口と共用部入口のみである。
●火打梁
 在来軸組工法では平面剛性の向上を目的として用いられる火打梁だが、気仙大工は土間隅の上屋柱を
    省略する目的で用いる。
●L字の縁側
 気仙地方かと近隣の地方の特徴である南面から座敷の横まで廻るL字の縁側。
 本計画では共用部とO家の緩衝空間となっている。
●扇垂木
 扇垂木は唐から伝わった大仏様の特徴の一つで、東大寺を代表とする寺社仏閣に用いられた技法だが、
 気仙地方の民家には、本格的は扇垂木が用いられたものが存在する。
 このことから、気仙大工が優れた技術を持っていたこと、中心地でも仕事を請け負うことがあったことが分かる。

 

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