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入賞 隙のある住まい

制作者
神戸大学大学院
中川寛之

■木造住宅の「隙」
私の実家は、古くから日本にある木造住宅であり、今でもご近所付き合いが残っているような場所です。
実家での暮らしはほのぼのとしており、周辺の人たちとの関わりの窮屈なものでなく、心地よいものでした。
私が暮らした実家や、ご近所さんの木造住宅からは、他のものを許容する「隙」というものを感じられました。
そのような「隙」をもつ現代に相応しい住宅を提案します。

■現代住宅に「隙」を生みだす
古くからの木造住居の「隙」は、土間や縁側のように柱や壁などの空間を形成する要素のうち、ある要素がはみだしている、
もしくは、ある要素が欠けていることでつくり出されていると考えます。その場所が固定化されない流動的な住宅を形成
していたのではないでしょうか。そこで、木造住宅感じられるような「隙」をプライバシーやセキュリティーなどが重要視
されている現代に再構築させます。空間を構成している柱梁、壁などの要素を一体として考えるのではなく、まるで独立して
いるようにそれぞれで考えてみます。それぞれの要素が重なり合うことで、固定的な空間に「隙」を与え、室の機能に
とらわれない根源的な「居場所」のようなものが生まれます。家族間、隣家間の距離を計れるような住宅となります。

■領域の多層化
領域を構成する”屋根”“壁”“柱””基礎”の四つの要素が別々に形成されるところで、様々な場所が生まれます。
柱梁が突き出しているところ、屋根のかかった土間空間、縁側、基礎のみの場所、といったふうに、
様々な領域が入り交じったような場所となります。
□屋根
基本的には、柱梁に沿った形。大きさを変化させることで光や風を取り込む。
□壁
敷地中心へ向かうようにズラされた壁。
□柱梁
壁などをズラす前に計画される構造体であり、場所を特徴づける。
□基礎
平面的、断面的に凸凹にすることで、領域性や視線に変化を加える。

■奥行きのある空間
この住宅は通常の住宅のように、部屋には廊下からアクセスはしません。壁は住宅中心にある干渉空間から放射状に
設けられています。干渉空間からある場所へと入り、さらにそこから違った場所へと入る、といったふうに、線的に
繋がった構成で、奥へ奥へとつながる洞窟のような場所となっています。他の場所との距離を調整できるような配置
となっています。

■素材を感じる
それぞれの要素が独立していることによって、一般的には壁や天井に隠れてしまっている柱や梁が露になってきます。
様々な居場所をつくることと同時に、木の温もり、素材を感じられます。

■柔軟な住まい
父(40歳) 母(38歳) 息子(10歳)
想定としてはこのようにしていますが、この住まいは一体であり、かつ分かれている、というように構成されているため、
一つの家族形態にとらわれない、家族形態の変化に柔軟に対応できる構成となっています。構造面ではなく、空間の構成に
よっても長寿命住宅を目指します。

■対象敷地
対象敷地は、兵庫県神戸市灘区鶴甲。六甲山の麓に位置し、標高は約300m。駅前の利便性が強調される昨今の住宅市場
ですが、市バスや乗用車を中心とした生活であれば、住宅にかけるコストが安くすみ、眺望や身近の自然、空気の良さ
などが手に入ります。


 

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