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林野庁長官賞 豊かさをつなぐ家~新しい伝統構法の形~

制作者

東京工業大学大学院

野口卓也・早川浩平・鈴木賢人・山崎義弘

家の「豊かさ」には、例えばコミュニケーションが挙げられます。家族が集った食事や団欒、何気ない日常生活におけるコミュニケーションは、人と人とのつながりの大切さを感じ、楽しい時間を過ごすことができます。
自然との調和も「豊かさ」の一つです。庭の自然から四季折々を感じることで、癒しや落ち着きを与えてくれます。
それらの「豊かさ」を一時的なものにはせず、幾年に渡って住み続けることのできる、何世代に渡って住み続けることのできる、そんな「豊かさ」を未来へとつなぐことが家の使命と考えました。さらに大きな目で、木材利用の活性化により、地球環境としての「豊かさ」も未来へつなげたいと考えました。

伝統的な古民家を例に挙げます。古民家の「豊かさ」として、襖と障子で構成されることによって家族、隣人とのコミュニケーション、人と人とのつながりを与えます。また縁側などの開口部が多く開放的で自然と調和した空間となっています。
ところが、「豊かさ」を未来へとつなぐことの障壁として地震があります。古民家の開放的な空間は「豊かさ」は生み出しましたが、地震に対しては弱点となります。古民家にみられる開口部の垂壁は全面壁に比べて耐震的に劣ります。南側に垂壁が集中し、北側に土壁が集中すると建物全体の強さのバランスが悪く、地震で壊れやすくなってしまいます。

地震により壊れやすいからという理由で「豊かさ」のある伝統的構法の建物が敬遠されることが少なくありません。そんな現状から、新しい伝統的構法を提案することで、伝統的構法の文化と技術を未来へつなげていきたいと考えました。

「豊かさ」を持ちながら、その「豊かさ」を未来へとつなぐ、新しい伝統的構法(貫壁構法)を用いた家を提案します。

建物概要
階数:2階 最高高さ:7m 建築面積:95㎡ 延床面積:151㎡ 1階床面積:87㎡ 2階床面積:64㎡
外部仕上げ
屋根:ガルバリウム鋼板
外壁:白漆喰仕上げ

豊かさ
庭と坪庭に開いた空間とし、四季折々を感じることができます。また、1階においては各部屋の戸を開くことで一室空間として利用することができます。
コの字型の回廊に囲まれた坪庭を通してどこにいても家族の気配を感じることができます。家族のコミュニケーションを豊かにします。
壁は真壁を基本とし、木材を積極的に現しで使うことで、自然素材を身近に感じることのできるぬくもりある空間となります。
提案するライフスタイル例
家族構成は父、母、子供二人を想定します。父は会社員で、仕事が終わり帰宅すると回廊から子供室の様子をうかがいながら、ダイニングに向かい、晩ご飯、入浴を済ませ、リビングでくつろぎます。就寝前には書斎で読書をします。休日は庭の手入れや、茶室で読書や日光浴をします。
母は、専業主婦の傍ら、客まで子供英会話教室開いています。月に一度は留学生や友人を招いたパーティーをします。パーティーの際は、1階の各部屋の戸を開くことで一室空間として使います。子供室にはハイサイドライトを設け、子供たちは朝日を感じながら起床します。学校が終わると、縁側や茶室、坪庭、回廊で遊びます。子供が巣立った後は、寝室を広げるなどプランの変更をすることができます。

森林整備に与える影響
現状の木材整備状況は戦後植樹された国産杉材の多くが利用可能な高齢級の森林に移行しています。その一方で、木材の需要が低迷しており、荒廃林の増加が危惧されています。
新しい伝統的構法を用いた家は、使用する木材を国産材で構成し、他の構法に比べて木材の使用する量は比較的多く、部材交換等により継続的に木材を使用します。
さらに、新しい伝統的構法が伝統的構法全体の普及に寄与することで、新たな木材の需要を生み出すことができます。
木材の需要増大から森林の機能保全が推進され、地球環境としての「豊かさ」を未来につなげます。

豊かさをつなぐ新しい伝統的構法ー貫・壁・柱構法ー
コンセプト
貫壁柱構法接合
部材
貫壁柱は柱が軸力、貫がせん断力を負担する木材のみで構成された現代的複合部材
接合方法
雇い材を介した込栓によるせん断抵抗型接合
従来の伝統的構法からの発展
耐震
貫壁柱で地震に抵抗
木材資源の有効活用
楔や込栓などの補強部材を定期的に取り替えることで、長期的に住み続けることができる。小断面の短い貫は端材を有効利用することにつながり、環境面でも優れている。また、真壁形式のため劣化診断も容易にすることができる。

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