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優秀賞 土間でつながる家族の日常

制作者

法政大学大学院

吉川圭司・木村友哉・松永竜弥

古くからあるものに目を向けてみると、意外に新鮮で便利だということに気づかされる。
靴を脱ぐ習慣を持つ日本人にとって生活に密着してきた土間は、古くから良き空間として親しまれてきた。
それは内部と外部の境界に位置する空間であるとともに、その二つの空間を緩やかにつなぐ要素となっている。このような日本建築がもっていた土間の本質的な良さは、内部と外部のあいだでのみ成立するものではなく、部屋と部屋、行為と行為といった住宅のあらゆる部分で成立するのではないかと考える。
そういった土間による関係性を住宅に用いることによって、家族が互いの気配を感じながら、心地よい距離感を生み出す住宅をつくりだす。
そういった日本固有の住空間の魅力を継承していくこと、またそれを踏まえて新たな土間のあり方を考えていくことが大切だと思う。
現代の住宅において、本来の土間のあり方と新たな土間のあり方をかけあわせることで、家族のつながりを見つめ直す。同じ家暮らしていながら、家族が別の部屋で何をしているのか気配すら感じられない今の世の中。嬉しい時も悲しい時も、良い時も悪い時も家族が互いにかかわり合いながら互いを思いやる気持ちを忘れず、家族が暮らしてゆく家とはどんな家なのか。
現代の空間のあり方を大胆にくつがえしてみよう考えたのが私たちのプランです。

■敷地概要
敷地は佐賀県西松浦郡有田町の山の中腹。古くから焼き物の町として有名であるこの町は、美しい景観を誇る田園地帯や黒髪連山など豊かな自然に恵まれた町でもある。

■家族構成と建築概要
陶芸家の父と専業主婦の母、中学1年生の長男と小学4年生の4人家族を想定。芸術家という、あまり家で生活をしない職業を持っている父と、3人の家族のつながりを考え直す。

■平面構成
一般的な住戸プランは強制的に部屋同士がくっついているため、家族のつながりは強く見えるが、実際はあまりいい距離感を保てていないと思う。
そこで部屋同士を切り離し、あいだを通り土間にする。そうすることで、部屋から部屋への上り下りという必然的な行為が、心地よい距離感を生むと考える。
京町屋のように、陶芸家としての仕事場を前面に、家族が生活する居住の場を背面に配置し、住居に奥性を持たせ、プライバシー性を高めている。

■土間の活用
有田という場所において、陶芸家である父の仕事場と居住空間の関係性について考えた。
陶芸家というのは住宅とは異なった場所に仕事場を持ち、そこで作業をするのが一般的である。しかし、そういった生活をしていると、父の存在を肌で感じることが少なくなり、家族同士のコミュニケーションが希薄になる。もっと仕事が生活と密着していいのではないかと考える。こういったことから、陶芸家である父の仕事場を一つの住宅に内包することを考えた。
土間とは本来、日本建築における家屋内の一部を構成する間取りである。その上、陶芸というのは土間の上で行われるものである。そこで仕事場にある土間を居住空間にまで延長することで、仕事場を含めた一つの大きな住宅を作り出した。そうすることで、仕事場と居住空間の境界の曖昧性という、日本古来の空間の魅力を感じる住宅になっていくのではないかと考える。
今回の計画では、土間を挟み込むかたちで部屋を配置しているため、そこには「母屋」と「離れ」のような関係性が生まれる。居住空間と仕事場の間の土間は他の土間とは違い、幅を大きくとっている。そのためこの場合。居住空間が「母屋」、仕事場が「離れ」のような意味をなしてくる。これによって、一つの住宅であって、一つの建物でないような空間をつくりだしている。
また住宅全体に土間を延長したことで、一般的な住宅でいわれる廊下は土間となり、部屋から部屋へ移動する際に必然的に上り下りする行為が生まれる。直でつながる部屋同士とは異なり、心地よい距離感ができる。それは、家族を柔らかくつなげるきっかけになると考える。
このように土間によって、家族のコミュニケーションの場を生み出し、またこの心地よい距離感がプライバシーを守る要素ともなる。土間とは時に、廊下であり部屋でもあり玄関でもあり庭でもある。はたまた、屋内でもあり屋外でもある。そういったように、あらゆる土間を住宅の中で構成していくことを考えた。

■建築環境計画
この住宅は少し建物高さを高くとり、上部に空気層を作り出している。また、屋根の北側に開口を設けている。これによって、夏は熱を上部に持ち上げ開口から逃がし、冬には空気層に暖かい空気を溜め、住宅全体の熱をコントロールしている。
軒の長さにも変化をつけている。軒の高さに反比例して、北側は短く、南側は長い。これは北側の居住空間に採光を確保するため、南側の仕事場に静寂を与えるためである。
北側と南側で軒の高さに変化をつけている。北側には山が続き、居住空間が隣接しているため軒は高く、南側はファサードとなり、仕事場が隣接しているため軒は短くしている。
風の流れも重要視していて、なるべく全体に風が流れるにようにしている。住宅のプランとして、部屋を離し、あいだを通り土間にしているため、それによってできた外側の隙間は玄関を含め全て片開き扉にしている。そうすることで、住宅が呼吸をするように風の流れをつくる。部屋や土間を介して、風が行き来するようになっている。そして、風の流れ=動線・視線の抜けになっていて、家族が自ずと巡り回りたくなるような風の流れ・住宅計画にしている。

■板倉構法
間伐材を利用して作る杉の厚板を用いた板倉構法を採用する。かつて穀物の倉庫などに用いられた伝統的な構法である板倉構法は、耐震性・通気性・調湿機能・防音効果・断熱性と言った木本来の特徴を生かした様々な利点がある。またその施工のしやすさとコストの低さから、今現在東北の被災地の仮設住宅においても利用され、現在最も注目されている構法の一つである。今回はこの板倉構法に用いる厚板を杉の間伐材で作る。間伐材はそのまま使用するには薄く狂いがあり強度も不十分なので、厚さ12mmの間伐材を互い違いになるように3層重ねた36mmの厚板を作り、その厚板を板倉として使用する。そうすることで杉の間伐材は、厚みが増し狂いがなくなり強固な構造体となる。

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