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優秀賞 共生住宅

制作者

広島国際大学
石井 由香里

Concept

「家のつくりようはう夏をむねととすべし」という言葉があるように伝統的な日本の民家は通気を
重視し、夏を快適に過ごすために工夫を凝らし、冬は寒さに耐えるというように作られています。
このため開口部を大きくとり、室内の間仕切りは壁ではなく障子や襖といった建具で仕切り、建具を
開け放つことで通気を図り高温多湿な日本の夏をしのぎやすいものにしていました。
しかし、このような特徴は現代の生活様式にそぐわなくなっていると思います。現代では冷暖房の
普及や家族の中でのプライバシー、または進んだ住宅設備により壁が必要な場所が多々あります。
私は、「日本の伝統的な家づくり」と「現代のライフスタイル」の両方を活かしたいと思いました。
風土に根ざした伝統的な民家の考え方を取り入れ、なおかつ現代の生活様式にも対応できる家を提案
します。家族で過ごす空間と個人で過ごす空間の両方を大切にする家。設備に頼らないパッシブ
手法で冷暖房の使用を抑制し、冷暖房を使用する場合はより効率よく活用できる家。伝統的な民家
の特徴である「開放性」と、現代のライフスタイルの中で必要不可欠となった「壁」をともに
活かしたパッシブシステム住宅を考えました。家族、地域、環境とのより良い共生を目指します。

設定
家族構成は夫婦と子供2人の4人家族としました。
父(40代)、母(30代)、息子(小学生)、娘(小学生)。
敷地は住宅地の一画を想定しました。東側は幅8mの道路(歩道含む)、南側を幅2mの路地、
西側と北側を隣家としました。

家族と共に
この家は平屋建てでリビングを中心とした間取りにしました。キッチン、ダイニング、リビングを
壁で仕切らずワンルームとし、各部屋の出入り口もすべてここに設けています。家族の誰もが
リビングやダイニングを通路として行き来し、自然とリビングに集まれるようになっています。
リビングとダイニングの間に家事作業のできるスペースを設けました。母親が孤立することなく、
リビングでの団欒に参加しながら裁縫や家計管理などの家事作業ができるようにしました。また、
この作業台や棚は玄関側から浴室、脱衣室などへの目隠しの役割もあります。リビングには大きな
縁側を設けました。家族で日光浴を楽しんだり、子供たちの遊び場となったり、来客時に内窓だけ
を開放してリビングを広くすることもできます。また、このスペースは雨の日や夜間の物干し場と
して活用することもできます。縁側は屋外の庭へと続いていて、家族や子供たちの庭での活動に
役立てます。また縁側の窓を内窓だけ開ける、外窓だけ開ける、両方の窓を開ける、両方の窓を
閉めるというように季節や用途によって変化させ、フレキシブルに活用できるようになって
います。リビング、室内の縁側、屋外の縁側、庭はいつも一定の繋がりなのではなく、その時々で
変化させます。室内、半屋外、屋外が住み手の意図によってスムーズな繋がりとなり、屋外や
半屋外を生活に密着させ外の空間を意することで四季の気配を楽しむことができるように
しました。各個室にも縁側を設けました。家族がそれぞれ自分だけの縁側を持つことになり、個人
スペースの充実を図り、自分に合った屋外との関わりを考えられるようにしています。

地域と共に
最近では強盗などの物騒なニュースをよく耳にします。様々な防犯設備が普及していますが、私は
近所付き合いが有効な防犯対策だと考えます。しかし近所付き合いが希薄になっているということ
もよく聞きます。私はその原因は「近所」という生活に密着した場所で他人とコミュニケーション
をとることで自分のプライバシーが知られてしまうのではないかという不安から近所との関わりを
避けている人が多いのではないかと考えました。そこで、玄関脇に応接スペースを設けました。
来客や地域の人の訪問にも家族のプライバシーを侵されることなく話をすることができます。
また、応接スペースの外にも縁側を設け手地域の人とのちょっとした世間話などにもベンチ代わり
に座ることができます。

環境と共に
縁側をはさんで内窓と外窓をつくり、縁側が空間として独立できるようにしました。この縁側空間
によって夏の日差しを室内に届かないようにし、初夏や晩夏には両方の窓を開放することで風の
呼び込み口となります。リビング、ダイニングはワンルームにして北側と南側に縁側をつくり風が
縁側から縁側へと通り抜けるように通風計画をしました。各個室においても縁側から風を
呼び込み、他の窓へと風が誘導できるようにしたり、通り抜ける窓を小さくして風速が強まる
ようにしました。これは風量の大小よりも風速の強弱の方が体感温度に影響をしやすいからです。
できるだけ通風を図ることで冷房の使用期間を短縮します。真冬や真夏など冷暖房を使う際にも
縁側空間は役立ちます。内窓と外窓を閉鎖し、縁側を外気と室内の緩衝地帯とします。室内の
冷暖房によって調節された空気が外に逃げにくくなり、外気の熱や冷気を伝えにくくします。冷暖
房設備が効率よく使用できます。冬は縁側の窓を閉鎖しておけば冷気が室内に伝わりにくいので、
暖房の使用期間が短縮されます。また、二重になっている窓は防犯にも役立つと考えます。壁は
外壁、内壁共に白の漆喰塗りで仕上げをします。内壁では採光が届きにくい場所でも壁を白にする
ことで暗さを和らげることができます。漆喰は燃えにくく防犯の役割もあります。屋根には越屋根
をつくりました。屋根は日射の影響を受けやすく、屋根裏には熱が溜まりやすい。屋根裏の熱が
居室の温度に影響するのを防ぐため、屋根裏の換気を促します。妻側の給気口から取り込まれた
空気が屋根が受ける日射によって暖められて上昇し、越屋根から排気します。また、越屋根を風が
通り抜けることにより生ずる吸引作用によって排気を促します。(ヴェンチューリ効果)。
屋根瓦は地震による棟崩れの心配がなく、断熱性もよいS字型にします。外構では庭を芝生に
しました。これは照り返しを防止するためです。芝生は青葉では反射率が小さく、枯れ葉では
大きくなります。夏期の表面温度も低く、好都合な材料です。

材料計画
適材適所という言葉の語源は建築現場の宮大工が使った言葉だと言われています。木造建築では
木材の特性を理解し、その長所が活かされるような場所に使うことが重要だと思います。土台、
水まわり、屋外の縁側には防虫効果があり湿気に強く耐久性のあるヒノキを使用します。柱は反り
やねじれが少ないスギを使用します。九州地方は温暖多雨で森林の育成に適し、スギ、ヒノキなど
の人工林が多いことからも九州で育ったスギやヒノキを用いて家を建てるのが望ましいと
思います。

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